【小泉一真.net】とは

職員・組織の意識改革を目指して、実名を明かし、情報公開請求とブログで戦ってきた、長野県庁元小役人・小泉一真(こいずみかずま)。平成23年5月16日、長野県庁「卒業」。民間人の彼に、何ができるか-「俺の体を斬ってみろ。シナノ・オレンジの血が流れてる」


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2010年10月10日日曜日

長野県観光の顧客満足度は最低-「県政世論調査」に思う

(平成21年7月、長野県庁において発表・提案したもの)
  
「長野県の観光に関する顧客満足度は、最低レベル」

これは、観光客として頻繁に来県する、川崎市職員から教示いただいた事実である。小職は、以前県観光協会に派遣されていたことがある。そのときから、観光満足度はあまり芳しくない数字だとは思っていたが、他の観光地と比較してみることをしなかった。ググってみると、大変な惨状にある。

平成20年7月1日の経産省「観光集客地における顧客満足度(CS)の活用に関する調査研究報告書について」では、全国59箇所で調査しているのであるが、こう述べている。

「観光客の9割以上が、満足している現状...大多数の観光客が満足層であることが解った。...このことから、多くの観光客が「満足」を得ることは、当然の状態であり、不満が示されるということは、その観光集客地において、かなり深刻な状況が発生した場合に限定される事が指摘できる」

そもそも、観光地は、観光満足度が高く、楽しめる所だからこそ観光地であるわけで、もともと満足度が高くて当然の調査ではあるわけだ。然るに。
平成21年度県政世論調査によると、「非常に満足」「やや満足」を合わせた観光客の満足度は、もっとも好意的な項目で、46.9%(ホテルの施設・設備)。最低の項目で、38.6%(観光サービス全般の接客態度)。

いやー、でも、よその自治体だって、似たようなもんじゃないのー。と思いつつ探してみたのであるが。本県と同程度に低い満足度が示された調査は、ついに一つも見つからなかった(泣)。
問題を指摘するだけでなく、極力、改善策・代替案を提示する主義の小職であるので、書いてみる。

1. 調査客体について
無作為抽出による長野県内在住の満20歳以上の者2,000人を対象とするのが、本県の世論調査。ところが、各自治体の観光満足度調査では、無作為抽出によるものは、調べた限りでは、見当たらなかった。空港のロビーだとか、宿泊施設、観光施設等の利用者を、調査対象としている。熱心な所だと、調査対象地点を、何ヶ所も設定する所もある。その意味するところは、明白であろう。
実際の消費者から、なるべく現場に近いナマの意見を取るのが狙いに、相違ない。
本県の観光満足度調査は、諸々の世論調査にひっかぶせて、いっしょくたに調査している。だから、調査コストは、安価で済むというメリットはあるだろう。しかし、そもそも「世論調査」に、観光満足度調査を付加することが、適切なのかという問題提起があっても、よいはずだ。世論調査は、県の施策に対する評価、または、県民の意識調査という側面が強い。それらの問題については、最大公約数を期待するものであり、なるほど無作為抽出の調査客体が、有効であろう。
しかし、マーケティング調査をしようとするなら、無作為抽出ではなく、ターゲットから意見を直接汲み取るべきた。調査客体の顔が見える調査でなくてはならない。なぜなら、そうでなくては、調査結果に対応した有効な策が打てないからである。
因みに、今回小職が調べた限りでは、他の世論調査とセットで満足度調査をしている団体は、本県のほかには、存在しない。

「観光立県長野」再興計画[2008~2012]では、観光満足度を、平成24年度までに50%にすることを目標としている。数値目標を掲げるのは素晴らしい。だが、数値を掲げるだけでは、目標はクリアできない。調査だけに終わらず、結果を分析し、対策を打たなければならない。そのためには、調査は、分析に耐える優れたものであることが、必要だ。本県の調査は、よその団体のそれに比べて、やや緻密さを欠く印象も受けた。
例えば、隣の新潟県では、観光条例を制定し、そればかりか「新潟県観光地満足度調査検討委員会」を開催して、「調査手法及び結果の分析、公表手法等の検討を行う」周到さである。本県は、このままでよいのだろうか。

本県は観光資源に恵まれるがゆえに、その上にあぐらをかく観光事業者のホスピタリティに問題があるとの説がある。それは、真実かもしれないし、行政がそう言うのはた易い。だが、観光事業者を「長野県行政」に、ホスピタリティを「施策展開」に置き換えたときに、そうではないと、我々は言えるだろうか。少なくとも観光満足度調査については、我々がそのように主張することは、苦しいと、小職は考える。

2. 調査結果の活用について
上述したように、観光満足度調査は、単に数値目標の指標を得るという以上の役割を果たすべきであり、そうでなければ、その調査の価値は半減する。つまり、分析し、対策を立てる材料となりうるように、調査を企画するべきなのだ。
ちょっと考えただけでも、回答者の性別、年齢、どこから来たか等の属性が分かるような集計とするべきではないかと、思いつく。観光目的、観光地、シーズン別の集計も欲しくなる。満足度を上げるためには、どのような情報が必要なのかという点から、発想しなければならない。
小職が特に感心したのは、「奈良のむらづくり協議会」のケース
特定の観光施設についての意見を、その施設にフィードバックし、施設からの回答は、ネットで公開している。ここまでやれば、なるほど、活きた調査と言えるだろう。各施設のホスピタリティは、着実にアップするだろう。すぐに真似するべきだ。
全県の統計数値を示して、危機感を持て、ホスピタリティを上げろと言っても、観光事業者はピンとこないかもしれない。だが、
「御社の施設のここが使いづらいと、利用客は言ってますよ」
と言えば、分かるはずではないか。

3. 結び
以上で、小職は、本県の観光満足度調査が、一般の世論調査と抱き合わせで実施されているという「特異性」を述べてきた。
観光満足度調査の特殊性を考えると、それ単独で、独自に、緻密な企画に基づいて行うべきだろう。
業者に任せるとすれば、委託料の確保が気になるところだし、もしかすると世論調査に負んぶされて我慢しているのは、案外その辺が理由なのかもしれないと、憶測する。
しかし、金をかけなくても、現地機関のネットワークを活用すれば、工夫次第で、自前で良い調査が、できるのではないだろうか。

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これを発表した当時、観光協会の元上司が、電話をくれた。

「お前のいうとおりだと俺は思うが、色々な意見の持ち主がいるから、気をつけた方がよい」

まー小職の出世が遅れているのは、だからだと、気が付いてます。問題に気づいたら、言いたいこと言うほうが、小職にとっては重要なもんで。すんませんっっ。

ここまで読んでくれて、ありがとう&お疲れさまでした。
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2 件のコメント:

  1. こういうこともしてたんですね、一真さん、グッと見直しちゃった。出世が遅れても言いたいことをいえる人って貴重です。大抵、そういう少数派の方に意見(と好み)が傾く私なのです。
    私自身もそれでJNTO内で白い目で見られてたことがあります:-)

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  2. やークミコさん、どうも。見つかっちゃいましたね(笑)。
    JNTOに、いらしたとは、存じませんでした。観光のことで、色々と教えてください。

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